知っておくべき「耐用年数」の基礎知識

知っておきたい「耐用年数」

耐用年数とは?

不動産などの形がある固定資産は年数とともに劣化します。そのため、建物の評価をするときには、年数とともに価値が減っていくと考えます。その建物が価値を保つと考えられている年数のことを「耐用年数」といいます。

ある建物が何年持つか?には様々な考え方がありますが、税金の計算などのためには、同じ尺度で計算できるよう、法定耐用年数が財務省令で決められています。

固定資産の取得費用や、減価償却費、売却時の売却益などを計算する上で法定耐用年数は非常に重要です。

なお、不動産であっても、建物には法定耐用年数が決められていますが、土地には耐用年数はありません。

建物の構造ごとの法定耐用年数

法定耐用年数は、建物の用途や構造によって細かく決められています。それぞれが何年であるかは、国税局の公表している耐用年数表で調べることができます。

参考:耐用年数表

不動産ではない固定資産「償却資産」って何?

不動産以外のものにも固定資産税がかかります。一般的には10万円以上の備品や構築物は固定資産となります。しかし、金額によっては一括で償却できるものなどもあります。詳しくはこちらの記事で説明をしています。

10万円以上の資産、例えば自動車や医療機器、カメラやパソコンなども固定資産となり、償却資産となります。償却資産について詳しくは耐用年数表などでご確認ください。

償却資産を保有している場合、毎年1月末までに申告をする必要があります。

経済的耐用年数

法定耐用年数と実際に使える年数は異なります。例えば、居住用のRC(鉄筋コンクリート)マンションの耐用年数は47年ですが、47年経ったら住めなくなる、というものではありません。RCマンションはきちんとメンテナンスしていれば60年以上は住めると言われています。

法定耐用年数はあくまで、税金の計算上、価値が0円になるのは何年、ということを決めるためのものです。それに対して、物理的にその物件の価値が存在できる年数のことを経済的耐用年数などと呼びます。たとえば60年を超えても十分住むことができるのであれば、その物件の耐用年数は60年以上だった、ということになります。

もちろん、修理するのに過大な費用がかかり、かえって赤字になってしまう等の場合は経済的に合理的とは言えませんので、経済的耐用年数を過ぎていると見ることもできます。

このように、経済的耐用年数は物件の用途、メンテナンスの状態等によって変わってくるため、一概にすることはできません。

中古物件の耐用年数計算方法(再取得価格)

中古物件の場合、耐用年数はどのように計算すればいいのでしょうか?例えば、築10年の木造住宅を取得した場合、木造の法定耐用年数は22年なので、差額の12年が残存耐用年数となるのでしょうか?実は、違います。法定耐用年数については計算方法が定められています。

① 法定耐用年数をすべて経過した資産の場合

法定耐用年数✕0.2 = その物件の耐用年数

※小数点以下は切り捨て

例えば、築30年の木造住宅を購入した場合、木造住宅の耐用年数は22年になりますので、22 × 0.2 =4.4→(小数点以下切り捨て)→4年となります。

② 法定耐用年数の一部を経過した資産の場合

法定耐用年数−経過年数+経過年数× 20% = 耐用年数

例えば、築13年の木造住宅を購入した場合、木造住宅の耐用年数は年になりますので、

22 − 13 +13 × 0.2 =11.6 →(小数点以下切り捨て)→11年となります。

耐用年数と不動産投資

『節税』を重視する方

耐用年数は税金を計算するときに大きな違いがあります。たとえば、同じ木造で5,000万円の物件を買う場合で計算してみましょう。

新築の場合 耐用年数は22年 償却率0.046 → 毎年の減価償却は  230万円

築30年の場合 耐用年数は4年 償却率0.025 → 毎年の減価償却は 1,250万円

このため、他の収入で利益が出ており税金を節約したい場合、築30年などの古い物件を買うことで、より大きく費用を取る事ができ、その分、税金を減らすことができます。

しかし、耐用年数の4年が経過した後はそれ以上償却することはできませんので、節税はできなくなります。そのため、耐用年数を経過した後は売却するなどの対応をする必要があります。

『融資』を重視する方

耐用年数には融資にも深い関係があります。金融機関は融資を検討するときに不動産の評価をします。その際に、建物は耐用年数の長いほうがより高く評価されます。従って、耐用年数が長いほうが、融資金額も高くなります。

また、融資をしてもらう期間にも関係があります。一般的に、金融機関は残存期間よりも長い融資をしません。例えばRC物件は、新築なら法定耐用年数が47年ですが、築年数が30年の場合、残存年数は17年とみなされます。その場合、融資期間も17年以上にはならないことが多いでしょう。

このように、融資の金額、期間を重視する方は、耐用年数が少しでも長い物件を選ぶのがいいといえます。

売却時にも重要

また、不動産を売却する場合にも、耐用年数は大きく関わってきます。

まず、売却益を計算する場合、売却金額と物件の取得額の差が利益とみなされるので、そこに課税されます。従って、取得額をなるべく多く取りたいのですが、売却をした人物が任意に操作できないように法定耐用年数を使って減価償却を計算する必要があります。減価償却が終わった後の残存額を取得額として売却金額を計算します。

先に述べた通り、投資スタイルと残存年数には深い関係があります。売却しようとしてる物件にどのぐらいの法定耐用年数の残存期間が残っているかによって、買い手のターゲットが異なります。買い手のニーズを深く分析することで、より的確な売却金額を設定する事ができます。

【関連記事】減価償却とは?概念や計算方法、不動産投資への活かし方を解説

まとめ

ここまで見てきた通り、不動産投資と耐用年数には深い関係があります。

耐用年数によって減価償却の金額が決まります。従って、毎年のキャッシュフローや納める税金の額に大きな影響があります。当然、売却時の物件の値付けにも関係があります。不動産投資事業をするにあたって、耐用年数と減価償却の考え方は、他人に説明できるレベルで深く理解している必要があるといえるでしょう。

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