【2024年】急速に進む円安と不動産投資への影響

2024年も半年が経過し、円安は留まるところを知らず、今なお急速に進行しています。ここ数年にわたって日本経済に大きな影響を及ぼしている中、不動産投資の分野においてもその波紋が広がっています。

本記事では、円安における最新動向を踏まえたうえで、不動産投資や市場にどのような影響を与えているのか分析していきましょう。

【この記事で分かること】
・2024年上半期の米ドル対円推移をまとめています。
・急速な円安によって不動産投資にどのような影響があるかを解説しています。
・海外投資家から見た日本の不動産への価値観が分かります。
・円安はローンの貸出金利へどのような影響を与えるのでしょうか。

【2024年最新】円安の動向

まずは2024年になってからの半年間で、1米ドルあたり何円になっているのか、その推移を確認しましょう。

(単位:円)

1月2月3月4月5月 6月
月中平均146.11149.46149.75153.63156.22157.93
月中最高148.26150.68151.59156.90157.97161.07
月中最低141.83146.49146.82150.99153.94155.30
(引用:七十七銀行「米ドル対円相場(仲値)一覧表 (2024年)」)

年明け1月時点での月中平均は146円でしたが、6月には11円高い157円となっています。そもそも2016~2021年まで1米ドルあたり100~110円代での推移ということを考慮すると、146円も驚くべき値でしょう。

 そして、2024年7月に入り、月前半の平均は160~161円と高水準が続いており、加速を続ける状況です。

円安によるコスト増と不動産投資の関係

円安は、経済はもちろん不動産市場にもさまざまな影響をもたらします。その中でも不動産投資においては、とりわけ建築コストの増加が顕著です。

本章では、不動産投資が円安とどのように密接な関わりを持っているか、解説していきます。

建築資材の大半は海外輸入品

建築資材の多くを海外から輸入している日本では、円安による輸入コストの高騰が問題視されています。

例えば、鉄骨やセメント、木材など建物の主要資材が上げられます。これらは国内での自給自足が難しいため、海外からの輸入に依存せざるを得ません。また、近年はロシアのウクライナ侵攻により、原油などの高騰も拍車をかけています。

よって、供給は安定しているものの、円安の影響を直に受けてしまい、建築コストの大幅な増加は避けられない状況です。

資材以外の建築コストも増加

円安は、実は建築資材だけでなく、その他のコストにも影響を与えます。

まず、輸送費(運搬費)です。輸入された資材を国内で運ぶための費用も、円安の影響を受けます。さらに、円安がインフレを引き起こす場合、労働者の賃金も上昇するでしょう。つまり、建築にかかる人件費が圧迫され、物件価格を高くせざるを得なくなるわけです。

円安によってさまざまなコストが増加するため、結果として不動産価格の高騰が免れなくなります。

新築物件の利回り低下

前述の通り、不動産価格の高騰は特に「新築物件」に大きな影響を及ぼし、利回りの低下へつながります。

例えば、年間賃料収入を84万円(7.0万円/月)、物件価格を2,000万円と2,500万円の2パターンで試算した場合、表面利回りは以下のようになります。

表面利回り(%)の計算方法=年間賃料収入÷物件価格×100
  • 2,000万円の利回り:840,000÷20,000,000×100=4.2%
  • 2,500万円の利回り:840,000÷25,000,000×100=3.36%

年間84万円の同じ賃料収入の場合、物件価格が2,500万円のケースでは0.9%近く利回りが低下してしまいます。2,000万円で試算した際の利回り4.2%に近付けるためには、ひと月8.8万円で貸し出す必要があります。

円安による海外投資家の参入

円安の影響が後押しして、近年海外から日本の不動産市場への関心が高まっており、多くの外国人投資家が日本市場に参入しています。犯罪率の低さによる治安の安定など、日本での不動産投資の魅力が注目されています。

日本の不動産が「安価な投資対象」として魅力

そもそも日本の不動産市場は、他国と比較すると相対的に安価であり、外国人投資家にとっては魅力的な投資対象です。

外国人投資家は主要都市への関心を強く示す傾向にあり、東京をはじめ大阪、名古屋、福岡などが人気のエリアです。これらの都市は経済活動が盛んで、安定した賃貸需要を期待できるでしょう。

これらのエリアでも他国の首都・主要都市と比較して安価で購入できるため、人気を集めているようです。

海外投資家による活発な物件購入

2020年のとあるデータでは、海外投資家による日本の不動産(住宅用)購入数が、前年の1.7倍という結果があります。

日本人の投資家と違い、海外投資家の出口戦略には「将来的な円高」によるリターンが期待できます。そのため、海外投資家は「円安による割安な不動産」の購入に積極的なわけです。

日本人は海外不動産も購入しづらくなる

海外投資家の参入が増えた一方で、日本人は海外不動産の購入がより難しくなっています。加速する円安で、海外不動産の価格が急速に上昇しているからです。これは、特に日本人の個人投資家にとって大きな問題でしょう。

これらの点から、日本人の投資家は国内外どちらにおいても有益な収益物件を見つけるのが困難になってきています。

円安による金利の動向

interest rates and golden coins with arrows

円安は、金利とも密接な関わりを持っています。円安になると、輸出企業は利益を上げやすくなりますが、輸入品の価格は上昇するため、消費者物価が上がります。

そして日本の金利政策は、金利を上げることで円高を誘導し、輸入品の価格上昇を抑制しようとするのです。

日本国民は円安による物価上昇で苦しい家計状況が続いていますが、金利上昇は負の影響を与える可能性もあるため、慎重な政策が求められます。

海外と日本の金利差を埋める動き

海外と日本の金利差は、資本移動や為替レートに大きな影響を与えます。

日本と米国の金利の差を「日米金利差」と言いますが、米国が金利を引き上げると、日米金利差が拡大します。近年の日米金利差と言えば、2019年の2.5%程度が高い水準でしたが、2022年の年末から2024年にかけて、倍以上に金利差が開いている状況です。

これにより資本はより高いリターンを求めて、米国に流れやすくなります。身近なことで例えると、日本国民がつみたて投資や株式投資で米国商品を購入することです。

日本政府や日銀は、この金利差を埋めようとする動きを見せることがあります。しかし、金利政策が消費者や企業の行動に直接影響を与えるため、日銀をはじめとする各機関は慎重に政策を進めていく必要があるのです。

投資用ローンの金利上昇の可能性

金利政策によって、不動産投資を行う投資家が直に影響を受けるのは投資用ローンです。さまざまな要因によって日本国内の金利が上昇すると、投資用ローンの貸出金利も徐々に上がるでしょう。

不動産投資では約7割が変動金利型による投資用ローンを利用しているという結果があり、投資家にとって収益性を左右する懸念材料となります。

建築コストの増加と同様、金利上昇によって利回りが低下しますので、物件を購入しようとする人々の意欲が減少するはずです。また、金利が上昇することによって、返済難に陥る既存オーナーの増加も考えられます。

このように、貸出金利の上昇による不動産市場への影響は避けられません。

金利上昇による不動産市場への影響

一般的にローン金利の上昇が起こると、不動産価格が下落すると言われています。金利上昇によって低迷する、消費者の購入意欲を引き上げるためです。

不動産市場が全体的に冷え込むと、建築業や不動産関連サービス業も影響を受けます。政府や金融機関は、これまでに解説したことをトータル的に考慮したうえで、慎重な金利政策が求められます。

また、私たち消費者も経済動向を見据えながら、物件の購入時期を見極めることが重要です。

 まとめ

円安は日本の経済、そして不動産市場に対して多大な影響を与えます。

各種コスト増による物件価格の高騰、海外投資家の参入・活発な買い漁り、金利上昇など、市場全体の動きを変える要因となり得ます。また、国内の投資家が新規投資を控える可能性にもつながるでしょう。

国内の投資家にとっては痛手の状況が続きますが、経済情勢をみながら買いのタイミングを見極め、慎重に行動するようにしてください。

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