2024年3月24日
宅建協会とREINSの役割は?事業者が加盟している団体を知ろう
宅建事業者は、必ずといっていいほど「全宅」か「全日」かのいずれかの団体に加盟しています。不動産業界では、これらの団体が「加盟社の社会地位の向上」などには止まらない重要な役割を担っているのです。
この記事で分かること
- 主要な不動産団体は「全宅」と「全日」の2つ
- ほぼすべての事業者がどちらかの団体に加盟している
- REINSは市場に流通する不動産の情報を集中管理するネットワークシステム
主要な不動産団体は「全宅」と「全日」の2つ
同業の事業者が集まって設立された「業界団体」はさまざまな業種に存在しますが、不動産業界で主要な団体といえるのは「全国宅地建物取引業協会連合会(全宅)」と「全日本不動産協会 (全日)」の2つです。
全国には13万社近くの宅建業者が存在していますが、ほとんどの事業者が全宅か全日のいずれかの団体に加盟しています。
宅地建物取引業協会と全日本不動産協会の違い
全宅の正式名称は「公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会」で、各都道府県ごとに組織された「宅建建物取引業協会」の連合体という位置付けです。シンボルマークが「ハト」であることから、不動産業界内では「ハト」が団体の愛称としても知られています。
一方の全日は「公益社団法人全日本不動産協会」という全国組織で、各都道府県にそれぞれ都道府県本部を置く組織構成です。こちらのシンボルマークは「ウサギ」であるため、ハトと同様に「ウサギ」とも呼ばれます。
加盟社数は全宅が約80%、全日が約20%で、全宅の会員数が全日を圧倒していますが、いずれの団体も組織の目的や業界において担う役割は大きく変わりません。
宅建業者はなぜ不動産団体に加入する?
業界団体へ加盟する動機はさまざまでしょうが、「その業界の社会的地位の向上」と「加盟による自社の社会的信用の向上」などが一般的ではないでしょうか。しかし不動産業界では、それ以外にも重要な理由があります。
なぜ宅建業者のほとんどが不動産団体に加入しているのかを知っておきましょう。
営業保証金の負担を抑えられる
宅建業を営むには、倒産などで取引の相手方へ大きな損害が発生することを防ぐため、営業保証金の供託が義務付けられています。その金額は本店が1,000万円、支店ごとに500万円と高額なため、新規開業者にとっては大きな参入障壁となっています。
ただし、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付すれば、営業保証金の供託と同様の効果が得られます。弁済業務保証金分担金は本店が60万円、支店ごとに30万円の負担で済むため、開業のハードルが下がるのです。
全宅連には「全国宅地建物取引業保証協会」、全日には「不動産保証協会」という、宅建業法で定められた保証協会を併設しているため、営業保証金の負担を抑える意味でもいずれかの協会に加盟することが有効なのです。
ほぼすべての事業者がいずれかの協会に所属しているのは、この理由によるものが大きいといえます。
REINS(レインズ)を利用できる
REINS(レインズ)は「Real Estate Information Network System」の略で、市場に出された不動産の情報を集約したシステムです。ただし、一般の方が利用できるものではなく、宅建業の免許を受けた事業者が会員登録をすることで初めて利用できる仕組みです。
全宅や全日に加入すればREINSを利用することができるため、これも多くの事業者が加入している要因の1つといえるでしょう。
REINS(レインズ)とは?
REINSとは、不動産の適正な取引のため、宅建業法に基づいて国土交通大臣が指定した「不動産流通機構」が運営している不動産情報のネットワークシステムです。
市場に流通している物件の検索や取引事例などの情報を一元管理して利用する会員各社に提供している仕組みで、宅建業を営む上ではなくてはならない存在といえます。
REINSは物件情報を集約したシステム
レインズは、流通している物件を地域ごとに一元管理し、効率的に検索ができるシステムです。その最大の目的は、「効率的に契約の相手方を探すこと」といえます。
それぞれの宅建業者が持つ情報を一元管理することにより、例えば買い手が求める条件を入力して検索すれば、他業者が媒介契約を結んでいる物件も含めて情報を得ることができるのです。
仮にレインズがなかったとしたら、顧客に対して提供できる情報、販売できる物件は自社が売主の物件や自社で媒介契約を結んだ物件に限られてしまいます。これでは宅建業者にとってビジネスチャンスの喪失につながるだけでなく、顧客に対しても不利益を与えてしまうことになるのです。
「専任」「専属専任」には登録義務がある
宅建業法第34条の2には、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んだときは、「指定流通機構への登録」を義務付ける規定があります。つまり、1社だけが独占して取り扱う形態で売却の依頼を受けたときには、レインズへ登録しなければならないのです。
宅地建物取引業法第34条の2の5には、以下のように定めています。
宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という)に登録しなければならない。 |
この法律に基づき、それぞれの媒介契約を締結した際には、以下の表に従ってレインズに登録する義務が生じるのです。
媒介契約の種類 | レインズへの登録義務 |
一般媒介契約 | 登録義務なし(任意で登録が可能) |
専任媒介契約 | 契約締結の翌日から5日以内 |
専属専任媒介契約 | 契約締結の翌日から7日以内 |
一般媒介にはレインズへの登録義務はありませんが、実際には多くの事業者が売却のチャンスを広げるためにレインズへ物件を登録しています。
REINSへの登録義務は「囲い込み」防止のため
登録義務を説明するためには、まずは仲介手数料の仕組みについて知っておく必要があります。
宅建業者が売主・買主から受け取る仲介手数料は、宅建業法でその上限が定められています。ただし、売主・買主双方の媒介をした場合には、両方から仲介手数料を受け取ることは禁じられていません。
つまり売り物件を預かった宅建業者にしてみれば、他の不動産業者が紹介した買い手と契約して売主だけから手数料をもらう(片手仲介と呼ばれます)よりも、自社で買主を見つけて双方の媒介(両手仲介)をした方が、仲介手数料を倍になるというメリットがあります。
この仕組みを悪用し、「他社からの買主の紹介を拒否して両手仲介を狙う」という悪事を働く業者を生んだことも事実です。このような行為は「囲い込み」と呼ばれ、長らく不動産業界にはびこる不正行為として問題視されてきました。
このため専任などで媒介契約を結んだときは、レインズに登録して他業者にもその物件の情報を提供しなければならない仕組みとされているのです。
エンドユーザーも一部の機能を利用できる
レインズは原則的には宅建業者だけが利用できるものですが、売却を依頼した売主は、その物件の登録状況などを確認することができます。
ただし、閲覧できるのはあくまでも自分が売却しようとしている物件の情報に限られ、販売図面などは見られません。
不動産投資家が知っておくべきレインズの使い方
不動産投資をする上でも、「購入や売却の可否判断をする」「所有物件の相場を知る」などの場面でレインズを活用することができます。
すべての機能は利用できないものの、過去の成約事例などは購入や売却などの取引の際に参考になるでしょう。
売却物件の登録状況を確認する
レインズを必ず利用すべき場面といえるのが、所有物件を売却するケースです。
前述の通り、売主であれば自身の売却物件の登録情報を確認することができます。ただし、ここで確認できる物件は専任もしくは専属専任の物件に限られ、一般媒介の物件は閲覧できない点に注意しましょう。
専任・専属専任の媒介契約では、レインズへ登録し、登録証明書を売主に交付することが義務付けられているものの、登録証明書を交付した後に削除することは可能です。
また、他社が紹介できるには取引状況が「公開中」とされた物件に限られ、「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」などに変更してしまえば他社は紹介することができません。
このような囲い込みを防止する対策として、売却物件の登録状況を確認することが重要なのです。
REINS Market Informationで過去の取引事例を確認する
REINS Market Information(レインズ・マーケット・インフォメーション)とは、過去の不動産取引の成約事例を公開しているサイトです。レインズが運営しているシステムですが、こちらは宅建業者でなくとも利用することが可能です。
地域ごとの成約事例をマンションと一戸建てに分け、沿線や最寄り駅からの距離、面積、間取りなどの条件を設定して検索できるため、購入や売却を検討している不動産に条件の近い物件がどのくらいの価格で取引されているか、いつ頃の成約事例かなどを確認できます。
取引の際の参考情報として活用できるシステムです。
参考:レインズ「REINS Market Information」
不動産業界の仕組みを知って出口戦略に役立てよう
不動産会社とパートナーとしての良好な関係を築くことは、不動産投資家として活動していくうえで大きなアドバンテージとなり得ます。
そのために知識の1つとして、不動産業界の仕組みやレインズに関する正しい情報を人s期していくことも必要です。
特に成約事例の情報などは、不動産の購入や出口戦略の検討にも大いに役に立つ可能性があります。
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