不動産投資の基本戦略◇物件のチェックポイント‧最重要事項

不動産投資で安定した収益をもたらすためには、購入前にあらゆる面を考慮した物件のチェックを行い、適正な物件のセレクトが求められます。

例えば、「区分マンション、一棟アパート、戸建て、どれにするのか?」ということから始まり、需要はあるのか、家賃相場はいくらか、どの程度の修繕が必要か、など考えるべき事項は多岐に渡ります。当然、物件によって収益性に違いがありますので、これらをくまなくチェックすることで、自身のリスク管理に繋がるでしょう。

そうは言っても「何をどうチェックしていいのか分からない」という方に向けて、この記事では購入前にチェックしておくべき物件のポイントについて解説します。

この記事で分かること

  • 投資物件で言う「いい物件」とはどんな物件でしょうか?
  • 物件のチェックポイントをカテゴリー別で解説します
  • 賃貸住宅では駅から何分以内が理想とされる立地なのでしょうか?
  • 地域の不動産業者へ聞くべき具体的な内容をご紹介します

物件選びの基本的な考え方!「いい物件」=「⾃分が住みたい物件」ではない

 投資物件で言う「いい物件」とは、単に「自分が住みたい」という感覚ではなく、「将来的な賃借人のニーズを満たす物件」を指します。エリアや市場を分析し、長期的に賃借人が求める条件を重視することによって、永続的に家賃収入を得ることが可能だからです。

例えば、投資家は住宅を選択する際、「静かで落ち着いたエリアが良い」と考えるかもしれませんが、実際の借り手は「交通アクセスが良く、買い物施設に近い場所が望ましい」と考える傾向にあります。物件の魅力を見極めるためには、借り手の視点で物件を見つめ直す必要があります。

また、「長期的に」というのは、エリア全体の需要も考慮しなくてはなりません。例えば、「大きな工場や大学の近くで、常に賃貸需要が見込める」と思っても、突然の撤退やキャンパス移動で、周辺需要が一気に下落してしまう可能性があります。これらは特に地方で起こりやすい傾向にあります。

エリアの将来性を含めて借り手のニーズに応える物件こそが安定的に収益を生み続け、長期的な成功に繋がるのです。

チェックポイント1:⽴地選定(アクセス、環境、将来性の評価)

ここからは、投資物件を選定する際に見極めるべき重要ポイントについて、カテゴリー別に順を追って解説していきましょう。

入居者が賃貸住宅を選ぶときに重視している物件の条件は、「家賃」に次いで「立地」と言われており、立地選定の見極めは非常に重要です。

マイナビニュースによると、東京都内に在住の男女218名に実施した『理想は最寄り駅から徒歩何分以内ですか?』というアンケートに対して、結果は次のようになりました。

・1位:5分以内 36.7%
・2位:10分以内 23.9%
・3位:3分以内 15.1%
引用:東京都内の住まい、理想は駅から徒歩何分? – マイナビニュース

駅近であるほど物件の価値は高く、駅から「5分以内」や「7分以内」など不動産ポータルサイトの絞り込み機能で表示されるよう、意識しましょう。

これを前提として、「スーパーまで自転車で何分かかるか?」「コンビニは徒歩圏内にあるか?」「仕事帰りに寄れるお店はどれくらいあるのか?」など、通勤や生活スタイルに適した施設があるかも入居者から重視されています。近くに病院もあると、なおよいでしょう。主な移動手段が車となる地方では、駐車場付きの需要も高くなります。

また、地域の発展計画やインフラ整備が進むエリアは、将来的な需要が高まる可能性があります。大規模開発や駅の新設があると、周辺一帯のマンション相場が大きく変わり、街の景色を一変させます。

これらを考慮しながら立地の魅力を見極め、将来におけるエリアの成長性を総合的な視点から評価することが大切です。

チェックポイント2:需要と供給のバランス 分析

次にチェックすべきは、周辺の「物件供給」と「入居者需要」のバランスです。

物件の供給数に対して入居希望者が多ければ、空室リスクや家賃下落リスクを抑え、継続的に安定した収入源の確保ができます。

「入居者需要」は、相場の広さ・間取りに合わせた家賃設定であれば、必ずしも良いというわけではありません。例えば、「この賃料に相当する設備は、これぐらい」というように、家賃設定と物件のクオリティが見合うかどうかが大切です。もちろんクオリティは居室部分だけではなく、共用部にも及びます。

【チェック事項例】
・この賃料を出すなら、入居者としてオートロックは欲しいだろう
・この程度の賃料なら、浴室乾燥機が無くても申込の見込みがある
・システムキッチンに変えると、賃料をプラス1万円上げても見合いそうだ
・この部分を修繕するのにお金がかかるから、しばらくキャッシュフローがマイナスになりそうだ

このように具体的な収益性を予測・分析することが必要です。多数の物件に触れる機会を重ねると、これらの目が利く投資家になれるでしょう。

チェックポイント3:利回り(収益性)の試算

物件取得にかかる費用と家賃の収益性もバランスをチェックすべき点です。

この収益率を測るのが不動産投資における指標の1つ、「利回り」です。利回りは数値が高いほど、収益性が高いことを意味します。

この利回りは2種類に大別され、以下の通り計算方法が異なります。

名称計算式
表面利回り年間の家賃収入÷物件価格×100
実質利回り(年間の家賃収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

不動産会社の広告やDMでは、高利回りになりやすい「表面利回り」を用いるケースが多く見られますが、現実的な収益率を計算するには、年間の家賃収入から経費(管理費、修繕費、税金など)を差し引いた「実質利回り」を求めることが必要です。その結果から、投資した資金に対するリターンの割合が明らかになります。

地域や物件の種類、構造、築年数などによって適正な利回りはそれぞれ異なります。

例えば、「都心」や「RC造」の物件は取得費用が高いので利回りが低く、「地方」や「木造」の物件は取得費が安いので利回りが高くなるのが1つの特徴です。

利回りが高いほど、リスクも高くなりやすい傾向にありますので、収益率を計算しつつリスクにも注意して、適切な投資先を選択しましょう。

チェックポイント4:建物の状態と維持費の検討 

不動産投資では、空室リスクや家賃下落リスクに次いで、「修繕リスク」も大きな懸念事項です。

天然素材である木造物件は雨風にさらされて劣化が早いため、居住用の耐用年数も22年と短く設定されています。実際にはほとんどの場合で22年以上居住していますが、10年に一回程度、屋根の防水工事などの高額修繕が必要です。

一方、鉄筋コンクリート造の物件は耐久性に優れ、耐用年数も47年と長期的な居住が可能です。ただし、エレベーターや機械式駐車場など機械設備が多い区分マンションは、修繕積立金が高額になりやすいでしょう。鉄骨造の建物も木造に比べて耐久性がありますが、地震対策などによりメンテナンス費用がかさむこともあります。

また、「区分所有投資」は一般的に毎月修繕積立金を支払うことで、修繕は計画に沿って管理組合が行ってくれます。一方で、一棟アパートや戸建てとなると、自身で計画的に修繕などにかかる維持費の貯蓄が必要です。

これらはそれぞれ利点と欠点があり、購入前に建物の状態を十分に確認し、綿密な検討が求められます。

チェックポイント5:建築基準 や条例など法規制の確認

不動産投資では、建築基準法や地域で定められた条例による制限のチェックも重要です。

分りやすい例を挙げるなら、「用途地域」でしょう。用途地域とは、土地利用の目的や用途に基づいて区分された地域のことです。用途地域の1つである「工業地域」は、主に工場や倉庫、製造業などの産業活動が行われる場所として指定されていますが、安いからと言ってこれらの地域を投資物件として選ぶと、騒音や悪臭で入居付けに苦労する可能性があります。

他の例では、東京23区や全国の一部の政令指定都市などに見られる「ワンルーム条例」です。この規定は単身者の増加を防ぐため、住宅の間取りの最小面積や部屋数に規制をかけるもので、投資物件の種類や収益性を圧迫してしまいます。

また、1981年以前に建てられた新耐震基準に適合しない古い物件は、地震時の安全性が懸念されるためおすすめできません。

これらの規制や基準を確認することで、将来的なリスクを最小限に抑え、法的なトラブルを避けることが可能です。

チェックポイント6: 周辺の宅建業者へのヒアリング調査

最後にご紹介するチェック方法は、宅建業者への聞き込み調査です。

ネット上である程度の内容はリサーチできますが、地域に密着した不動産業者にヒアリングをして情報収集することは、リアルタイムの市場動向が分かり信頼性があります。

【調査すべき基本的な内容】 
・家賃相場や下落傾向
・求められる設備
・エリアの特徴や将来性
・地域住民の特性や客層
・治安の良し悪し
・周辺にある類似物件の特徴
・駐車場の必要性
・敷金礼金などの初期コスト、更新料などの必要性
・広告料の水準 など

詳しく教えてくれる業者もいれば、そうでない業者もいます。また、土日や1~3月などの繁忙期は、ヒアリングだけでお金にならない顧客の対応に手が回らないケースもあります。

業者の担当者やタイミングをよく見計らって、複数の業者から情報を集めましょう。

まとめ

不動産投資において物件選択は最重要事項と言えます。この記事でご紹介したチェックポイントを踏まえたうえで、気になる物件は必ず直接自身の目で見て確かめること、また周辺調査と地元不動産会社へのヒアリングを丁寧に行うことが成功の鍵となります。チェックポイントをしっかりと精査し、自身の目的にあった物件を見つけ定期的な不労所得を手に入れましょう。

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