2024年3月27日
不動産投資の基本戦略◇リノベーション物件について
不動産投資初心者は、「入居者に好まれるオシャレな物件で賃貸経営をしたい」「デザイン性の高いマンションを所有したい」といった欲望から、リノベーション物件に引かれることがよくあります。しかし、市場で魅力的に見える物件でも、リノベーションで物件の価値を向上させつつ数字とのバランスを合わせることは、容易ではありません。
投資家として不動産運用に成功するためには、常に冷静な視点を持って収益性を検討する必要があります。「そのリノベーションは儲かる投資なのか?」という問いに向き合い、慎重な計画と戦略が求められます。
この記事では、「不動産投資におけるリノベーション物件」をテーマに、予算・コストや収益性、またメリット・デメリットなどを解説していきます。
この記事で分かること
- リノベーション投資の概要とリフォームとの違いについて
- リノベーション投資を行う際、物件選定の基準や考え方とは?
- リノベーション投資のリスクや危険性について
- リノベーション投資のメリット・デメリットをご紹介
「リノベーション投資=リフォーム物件」ではない?
そもそも、リノベーションとリフォームの違いをご存じでしょうか。いずれも物件を直す作業をすることですが、「価値向上」の部分に違いが見られます。
リフォーム | 経年劣化による老朽化などで、機能低下した部分を元に戻す修繕工事 |
リノベーション | 既存の中古物を全く別の物件に生まれ変わらせる、大規模な改修工事 |
近年、不動産投資ではこのリノベーションによって新たな付加価値を付ける「リノベーション投資」が注目されています。資産価値、かつ入居者ニーズが高い新築物件は、インフレや全体的な不動産価格の高騰を背景にますます取得しづらくなってきました。代替的に投資家たちの間でリノベーション投資需要が高まったと言えるでしょう。
リノベーション投資は、一般的に物件価格が緩やかになり始める築10~15年以上の中古物件で行われます。これぐらいの物件は、水回りなどの設備交換や外壁の塗り替えなど、ちょうどメンテナンス時期にもなるからです。築30年以上の築古物件でもリノベーション投資はよく見られ、幅広く運用されています。
リノベーションに適した収益物件の特徴とは
リノベーション投資を行う際、一般的に不動産投資で重要とされている「価格」「エリア」「立地」などの基本要素に加え、「物件の状態」が大きなポイントです。マイホームとは異なり、不動産投資では「コストをいかに抑えて付加価値を付けるか」を、戦略として最重要視しなくてはなりません。
リノベーションに適した物件として考慮すべき基準は、まず「耐震性能」です。1981年以前の旧耐震物件は、いくら見た目をリノベーションで新築のように綺麗にしても、入居者からの需要は低くなってしまいます。
耐震性能を向上させるために大規模な工事をするにしても、多大なコストを要するため、選ばない方が無難です。また、一般的に木造物件はリノベーションの自由度が高いことが特徴です。
このことを前提におき、リノベーション物件を手に入れる際の方法を3つご紹介します。
- 何もリノベーションがされていない物件
- 一部リノベーションがされている物件
- フルリノベーションされている物件
マイホームでは上記③のケースが多く見られますが、不動産投資では多くの場合が①~②のケースでしょう。
①の場合、少し手を加える小規模工事によって大きな付加価値がつく物件を選ぶことがポイントです。特に屋根や外壁、水回り設備の工事を検討することは重要です。これらにまで手を加えると、家賃収入との費用対効果が見合わずマイナスになってしまったり、回収までの期間を多く要してしまったりします。どうしても気に入った物件でコストのかかるリノベーションが必要な場合、これらの予算を考慮して物件価格を決めましょう。
物件の一部がリノベーションされている②のケースでは、物件価格を高めに設定して売り出す傾向があります。すでに行われたリノベーションに対して、物件価格が割高になりすぎていないか、判別するスキルが必要です。
ただ単純に「安い物件」を選ぶのではなく、「リノベーションとの価格バランス」を重視しなくてはなりません。
リノベーション計画とコスト管理
リノベーションの方法は、天井高や間取りの変更という大規模なものから、クロス張替など部分的なもの、さらにその中でのグレードが幅広く、実に多種多様です。
また、構造や広さによってもかかるコストがかなり異なるでしょう。一般的に築古の一棟アパート投資(木造)では300~500万円程度かけることが多いようです。
リノベーション計画では、「何をどこまでやるか」が要点となります。例えば、浴槽の劣化が気になりリノベーションを検討する際、「ユニットバスを一式取り替える必要性があるのか」「コーティングだけで価値が蘇るのか」「壁の修繕も必要なのか」など、複数の選択肢が考えられます。
修繕箇所 | 修繕費用相場 |
ユニットバス一式交換 | 100万円前後~ |
浴槽のみ交換 | 5~15万円 |
浴槽コーティングのみ | 5~15万円 |
浴室の壁補修 | 10万円前後 |
このように改修箇所の予算を考える際には、常に「このリノベーションにこれだけの費用をかけることで、どれぐらい儲かるのか?」という視点で決定していきましょう。
リノベーションをすると市場価値は上がる?
リノベーションを行うと、売却時の物件価格が高くなることがあります。
しかし、もともと中古物件の売却価格は、「建物の耐用年数」に関する要因が大きいので、かけた工事費用のわりに大きくプラスとなることは考えづらいかもしれません。キャピタルゲインを狙ったリノベーションは、あまり有効的な戦略ではなさそうです。
賃貸需要としては、中古物件をそのまま貸し出すよりは、当然需要が高くなることが考えられます。特に古い物件に多い「DK」を「LDK」にしたり、和室を洋室にしたりすると、需要は大きく変化して長期的に愛される物件となるでしょう。
最近では、SNSの普及で入居者自身がDIYをする機会も増えました。キッチンシートやフロアシートなど、入居者自身で施工・原状回復が容易である部分は、さほど手を加えすぎなくても良いかもしれません。
リノベーション投資のリスクとは
リノベーション投資は、魅力的な物件が手に入り賃貸需要のアップが見込まれますが、そこにはリスクも同居します。
例えば、予測以上の老朽化で追加の補強が必要となり、予算やスケジュールに影響が出る可能性があります。配管の老朽化、電気系統といった専門性を要する不具合は、職人探しも大変です。
実際購入後にこれらが発覚して予算がオーバーランしてしまうことも、頻繁に発生しています。予期せぬ修復や変更が必要になると、計画通りに進めることが難しくなります。これらの問題に対処するには、ホームインスペクションなど事前の調査やプロの助言、柔軟性を持った予算計画が不可欠です。
リノベーションの法的要件に潜む危険性
リノベーション投資を行う際には、法的要件の考慮も必要です。
大規模な増改築をする際には、建築基準法を確認し、時に建築確認が必要になることがあります。消防法などの要件にも留意し、建物コードや消防規制に基づいたリノベーションが求められます。
また、築古物件では「アスベスト」が含まれている危険性も考慮しなくてはなりません。耐久性・耐熱性に優れているアスベストは、2006年にその使用を全面的に禁止されるまで、日本では多くの建物に使われていました。
アスベストを原因として肺がんなどの病気を引き起こすことが確認されており、リノベーションを行う際には、アスベストの飛散で業者や地域住民に健康被害を及ぼす可能性があります。最悪のケースでは、多額の損害賠償を請求されてしまうでしょう。憲法や建築基準法など、不動産投資ではこれらの法的要件をしっかりと順守することが大切です。
リノベーションにも融資は使える
不動産投資では「リノベーション」部分においても、ローンを活用することが可能です。ただし、旧耐震物件についてはローンの承認が難しい場合があります。これは、建物の老朽化や耐震性の不足がリスクと見なされるからです。
一方、リノベーションにより新たな価値を生み出すことで、ローンの取得がスムーズに進むこともあります。不動産投資で利用するアパートローンでは物件の収益性を重要視するため、その価値次第では金利優遇の可能性もあり得るかもしれません。
金融機関から借入を行う際の注意点は、緻密なシミュレーションを重ねた計画的なプラン内容と、計画における信頼性のある根拠を提供することです。リノベーション後の物件評価がローンの担保価値に影響するため、慎重かつ的確な投資計画が求められます。
業者でやるかセルフでやるか: それぞれのメリット‧デメリット
リノベーションコストを下げるには、部分的に自分で改修することも1つの手です。
時間や手間がかかり業者よりも精度は劣りますが、悪いことばかりではありません。リノベーションを業者に依頼する場合と自分で行う場合、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
メリット | デメリット | |
業者へ依頼 | ・手間や時間がかからない ・プロ品質の完成度 ・不足の問題に対応してもらえる | ・コストが高額になる ・業者の予定に合わせる必要がある ・プラン、デザインが制限される |
自分で行う | ・費用を節約できる ・DIYスキルが上がる ・自己満足度が向上する ・自分のアイディアに基づいたリノベーションができる | ・DIYスキルや専門知識を要する ・作業の遅延、品質の低下 ・不足の問題への対応が困難 |
自分で改修工事を行う最大のメリットは、低予算での物件価値向上、そして収益性アップを期待できることです。
最近ではさまざまな媒体から、リノベーション手法など情報を容易に取得できます。これらのスキルは今後不動産投資をしていく上でも役立ちますので、できることなら一度自分で試してみたいものです。
リノベーション業者の探し⽅
リノベーションを業者に依頼する際は、慎重な調査が肝要です。
仲介の不動産会社から紹介してもらえる場合もありますが、より低コストで実施するなら自分で探す方が賢明です。インターネット検索の活用、友人や家族に聞いてみるなどして、複数の業者と相見積もりをとってみましょう。
インターネット検索では、口コミ・レビューの確認は必ずして下さい。実績豊富で地域の信頼性のある業者をリサーチし、スキルや料金帯について下調べをします。
次に、業者が有する資格や保険・補償の有無を確認しましょう。適切な資格を持っている業者は信頼性が高く、保険・補償の適用を受けることでリスクを軽減できます。また、無料の見積もりを提供している業者を選ぶことで、予算に合わせた選択が可能です。
低コストや豊富な実績であることはもちろん、業者のコミュニケーション能力も鍵となります。初めての面談や打ち合わせ、また実際の工事では相性が重要で、要望・期待を明確に伝えましょう。
最終的な契約前には、心配や不安、不明瞭な点をなくしておくことも大切です。これらのステップを着実に踏むことで、信頼性の高いリノベーション業者と出会うことができ、収益性の最大化に繋がります。
まとめ
今回は不動産投資の基本戦略として、「リノベーション物件」に焦点を当て解説しました。初心者はオシャレなデザイン性の高い物件に魅了されがちですが、数字とのバランスを取るのは容易ではありません。投資家として成功するには冷静な視点が必要で、「儲かる投資なのか?」という視点が重要です。
リノベーション投資は中古物件に新たな付加価値を生み出す注目の手法であり、適切な物件選定と計画が成功の鍵となります。
リスク管理や法的要件も確認し、ときにプロや専門家にも頼るようにしましょう。また、リノベーションを業者に依頼するか自分で行うかは、それぞれにメリットとデメリットがあります。業者へ依頼する際には、信頼性の高いリノベーション業者を選び、不動産投資を成功へと導きましょう。
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