2024年3月27日
不動産投資の基本戦略◇オーナーチェンジ物件の注意点
中古の投資物件を探している人が、必ずと言っていいほど遭遇する「オーナーチェンジ物件」。 一般的には区分マンションを指し、すでに入居者が居住しているのが魅力である一方、潜在的なリスクにも目を向けなければいけません。
本記事では、オーナーチェンジ物件選びの視点を基に、概要や収益性、またリスク管理など成功の鍵を握るポイントを解説します。最終的な購入判断を下すためのチェックリストを提供し、賢明な投資の在り方をご紹介します。
この記事で分かること
- オーナーチェンジ物件とはどんな物件なのでしょうか
- オーナーチェンジ物件の収益性の評価ポイントはどこでしょうか
- オーナーチェンジ物件の潜在的なリスクをご紹介します
- オーナーチェンジ物件を選ぶ際のチェックポイント
- 方法を解説します
オーナーチェンジ物件の概要
オーナーチェンジ物件とは、既に入居者がいる状態で売却される不動産のことを指します。入居者がそのまま住み続けるため、購入してすぐに賃料収入を得られる点が大きなメリットです。購入直後の長期的な空室リスクがなく、金融機関から収益性を評価されるためローン承認も得やすくなります。
しかし、入居者がいるため室内の内覧が難しい場合がほとんどで、購入時にリスクが伴うことを理解しなくてはなりません。これまでのオーナーがどのような修繕をしていたか、また物件のメンテナンス状態はどうかが非常に重要です。
中古の区分マンション投資は、不動産投資の中でも低コストで比較的手軽に始められるため初心者から人気があります。しかし、オーナーチェンジ物件は購入前に将来の修繕費用やトラブルの発生リスクを予測しておくことが鍵となります。
また、他の不動産投資と同じように、購入後は入居者との関係構築がスムーズに進むように心がけることが大切です。入居者の日常生活に配慮した運用を行うことで、長期的な賃貸経営が可能となります。
収益性の評価・分析
物件の収益性を見極めるためには、適正な購入価格の判断はもちろん、将来のキャッシュフローの見積もりや、資産価値が時間とともにどう変化するか予測する必要があります。
また、物件の立地や建物の状態、市場の動向など、多角的な視点から分析を行うことが成功に繋がります。
収益性を左右する主な要因
収益物件の魅力をしっかりと評価するためには、不動産経営やキャッシュフローに影響を与える要素を把握しておくことが必要です。一例として、以下の点が挙げられます。
・物件の購入価格 ・入居者から得られる賃料総額 ・運営コスト ・ローンの支払い条件 ・市場の賃貸価格の動向 ・リフォームやメンテナンスの必要性 |
上記は代表的な例であり、その他にも影響を与える要素は多岐にわたります。購入前にこれらのシミュレーションを緻密に行い、そのバランスを見極めることが大切です。
賃貸状況の分析
また、オーナーチェンジ物件の購入を検討する際、エリア全体に目を向けた「賃貸状況」の分析が特に重要です。
・どのような層の入居者が多いのか ・入居率の推移はどうか賃料の推移はどうか ・地域に競合物件が供給過多になっていないか |
次々と変化する市場環境の中で、購入を検討する物件の位置付けを正確に理解しなくてはなりません。空室が少ないエリアであるかや、その物件がいかに安定した収益をもたらすかを分析し、投資判断の基準として取り入れる必要があります。これにより、長期的な資産運用ができるでしょう。
既存入居者との賃貸借契約は引継がれる
次に、新所有者と既存入居者との契約内容がどのように変化するのかを解説していきます。
賃貸契約の引継
物件を購入後、新所有者は改めて既存入居者との賃貸契約を締結し直すことは不要です。
民法では、物件の引渡しとともに旧所有者の有する権利や義務を、新所有者に承継するものとされています。オーナーが変わることに対して入居者の同意は必要ありませんが、オーナーであることを主張するには所有権の移転登記が必要です。
敷金・礼金の扱い
入居者がすでに旧所有者へ敷金(保証金)を支払っている場合にはこれも引き継がれるため、新所有者は敷金返還債務を負います。ただし、入居時に支払われた礼金は、あくまで「謝礼」扱いですので、礼金には返還義務がありません。
扱い目的 | 返還の必要性 | |
敷金(保証金) | 家賃滞納の補填 退去後の原状回復 | 必要※賃借人の負担分を差し引いて返還 |
礼金 | 謝礼 | 不要 |
関係構築による契約継続
不動産知識があまりない入居者の中には、突然のオーナーチェンジに驚いたり不信感を抱く方もいます。緊急時やトラブルの対応が適切でないと、「オーナーが変わってから不親切になった」などと誤解されてしまい、退去の原因にもなりかねません。
管理会社と連携し、適切な物件管理を行うことはもちろんのこと、定期的に入居者へ配慮を行うことで、長期的に安定した入居へ繋がります。
建物におけるリスクとチェックポイント
オーナーチェンジ物件を購入する際には、収益性を見極めることも大切ですが、それと同時にリスク管理が極めて重要です。実際の運用過程で訪れる不測の事態に備えて、リスクを事前に洗い出し、対策を講じておく必要があります。
オーナーチェンジ物件のメリット
オーナーチェンジ物件には様々なメリットがあります。
・物件価格が安い ・買ってすぐに家賃が入る ・出口戦略が取りやすい |
物件価格が安い
オーナーチェンジ物件は入居者がいることが前提です。特に区分所有の一室の場合、入居者様に出て行っていただくことは簡単には出来ません。自分自身で住むのが難しいため、オーナーチェンジ物件は、同じエリア・同じ広さ・同じ築年数といった同条件の物件に比べて割安な価格設定になっています。
買ってすぐに家賃が入る
オーナーチェンジ物件の場合、すでに入居者がいますので、買ったときから家賃はあなたのものになります。募集に当たっての広告費や諸経費は不要であり、銀行への返済のメドもつけやすく、安定して経営を始めることが出来ます。
出口戦略が取りやすい
自分が住みたいと思ってマンションを買うことを「実需」といいます。オーナーチェンジでの販売価格は実需の価格に比べて安くなりがちです。そのため、仮に買ってすぐに入居者さんが出ていったとしても、その時点で売却すればすぐに数百万の転売益が得られることがあります。
こちらの都合で入居者を追い出すことは難しいので、この転売益がいつ得られるのかはちょっと不透明ですが、物件を割安で購入できた時点で、投資としては成功です。
オーナーチェンジ物件のリスク
オーナーチェンジ物件の大きなリスクは「内覧ができないこと」というのは先述の通り。この点では、修繕にかかる費用負担の予測が立てられないことが大きなデメリットです。
しかし、その他に現オーナーの売却理由にも着目する必要があります。入居者がいて家賃収入があるにもかかわらず手放すということは、何か隠れたデメリットがあるのかもしれません。
- 別の投資物件への買い替え
- 何らかの理由で管理が難しくなった
- 手元にまとまった資金が必要になった
- 大規模修繕が近く値上がりを予想している
- 空室への早めのリスクヘッジ
- 思うようにキャッシュフローが出ない
1~3に該当する売却理由であれば、買主側として特に問題はありません。懸念すべきは売却理由が4~6のとき。売却理由で、収益を期待して購入したものの、思ったような収入が得られない場合、経営の悪化や大きな損失に繋がってしまいます。
不動産投資に精通している投資家は、物件が空室のままでは売却活動が苦戦することを理解しており、あえて入居者付けしてから手放す戦略をとります。稀ではありますが、売却したいがため親戚や知人などを一時的に入居者に見立てる所有者もいるようです。そういった物件を購入してしまった場合、オーナーが変わった途端に退去になってしまい、一から入居者の募集をする必要が生じてきます。
本当に収益性のある物件かどうか、売却理由や経営状況にもしっかりと目を向けましょう。
オーナーチェンジ物件のチェックポイント・方法
それでは、実際の建物のチェックポイント、チェック方法を順にご紹介しましょう。
①外観・共用部
外観や共用部は、居住者の質やモラルが顕著に表れる部分です。特に、ごみ置き場はルールがしっかりと守られているか、また悪臭やカラス被害などを確認しましょう。
エントランスに掲示板がある物件では、掲示物の日付と清掃状況に目を向けてみてください。古い日付の不要なお知らせがいつまでも掲示されていないか、業者が清掃に入って日が浅いのに汚くないかなど、管理会社の質も垣間見ることができます。
②修繕履歴
内覧ができないオーナーチェンジ物件は、購入する前に売主から「修繕履歴」を提供してもらいましょう。費用が高額になりやすい「水回り設備」「給湯器」の取替時期や修理履歴、また建物全体の大規模修繕工事の履歴などです。大規模修繕に関しては履歴だけでなく今後の計画も確認し、過去の修繕積立金の値上がり状況も気にしてみてください。特に「旧耐震物件」を選ぶ場合は、とりわけ注意が必要です。
また、区分マンションでも最上階や上階がない部屋、角部屋は雨漏れも起こり得ます。他にも配管トラブルなど、突然の大きな出費に繋がる点は入念に確認しておきましょう。
これらを徹底的に精査をしておかなければ、投資における利益が無くなるだけでなく、損失ばかりが膨らんでしまいます。
③既存入居者との賃貸借契約
消費者保護の観点から、入居者と一度締結した契約内容を容易に変更することはできません。そのため、承継される契約内容について、十分理解したうえでの購入が必要です。
・賃料 ・契約期間 ・管理費 ・初期費用 ・更新料 ・保証人、保証会社 ・解約、原状回復の取り決め ・特約事項 |
例えば、最近の賃貸契約では保証会社をつけることが主流になっていますが、長期間同じ入居者が契約している場合は、保証人を立てている可能性があります。保証会社が行ってくれる滞納保証や、強制退去による裁判手続きを売主が行わなければならず、大変な労力がかかります。
管理会社を利用する場合でも、保証人だけでは賃料回収が上手くいくとは限らず、その間の賃料収入がないことも考えられるでしょう。
このように、契約内容1つ1つの項目にかかる意味をきちんと理解して、自身を守ることが必要です。
④周辺環境
物件の周辺環境を調査するときは実際に周辺を歩くこと、そして駅まで歩いてみることが有効です。駅までの行きやすさはもちろんのこと、駅から物件までに薄暗い道が多いと、特に女性の入居者が見込みづらくなります。
将来的な周辺環境の発展や、交通網の拡充、衣食住の生活環境が整っているかは不動産投資に共通する大切なチェックポイントです。
⑤収入推移の一覧表
可能であれば現オーナーから、これまでの賃料収入の推移が分かる一覧表をもらうとよいでしょう。複数の物件からなるアパートでは、各号室ごとに賃料が書かれたものを「レントロール」と呼びます。
家賃の下落率や空室の発生期間を確認して、事前に対策を講じることが大切です。実際には入居中と表記されていても「滞納」している場合がありますので、細かく質問を投げかけて心配ごとを減らしていきましょう。
オーナーチェンジ物件における適正な購入価格の考え方
賃貸市場は、経済情勢やライフスタイルの変化、さらには自然災害などの外部要因によって、目まぐるしく変動します。
例えば、都市部では一人暮らし向けのワンルームマンションの需要が高い一方で、地方や郊外ではファミリータイプの住宅が好まれる傾向にあるでしょう。また、リモートワークの普及により、都心から郊外へと住居を移す動きが活発になった時期もありました。
新しい住宅技術やサービスアパートメントの台頭など、市場のニーズは次第に多様化してきています。オーナーチェンジ物件を選ぶうえで、このような変化するトレンドの把握が求められます。
オーナーチェンジ物件による購入価格が適正であるかどうかの判断は、これらの賃貸市場を考慮しながらリフォームやメンテナンスとのバランスを見極めることが大切です。
まとめ
この記事では、オーナーチェンジ物件に焦点をあて、注意点やチェックポイントを重視しながら全体の概要を解説しました。
オーナーチェンジ物件は、一見すると不動産投資の最も懸念される「空室リスク」をカバーしてくれる、とても魅力的な物件です。しかし、メリットばかりに魅了されて購入してしまうと、内側に潜むリスクにさらされ、不動産投資が失敗に終わってしまいます。購入前のリスク管理と徹底的なチェックを怠らず、自分の投資目標に合った適正な物件選択が求められます。
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