2024年3月24日
不動産投資「なぜ利益が発生するのか?」
不動産投資をしようと思っている人や、実際にしている方はかなり多くいらっしゃいます。一方で、「なぜ利益が発生するのか?」について理論的に説明ができる人というのは意外に多くありません。このコラムでは、「なぜ 不動産投資で利益が生まれるのか」について理論的にご説明をします。
所有とレンタルの差額
あなたが5千万円持っていたとします。それで一軒家を買います。 その一軒家を月30万円で貸します。年間の売上は360万円です。 維持管理や税金にだいたい、毎年賃料の10%程度がかかります。したがって、粗利は324万円です。これを、15年ちょっと続けると5,000万円が回収できて、それ以降は全部利益という形になります(実際には毎年所得税も発生します)。これが基本です。
5千万円で家を買うのではなく、250万円の車を20台買って、レンタカー屋さんをすることも出来ます。仮に1台の車を1日1万円、回転率が50%とすると、年間の売上は1台あたり182万円、20台で3,640万円の売上になります。ここから家賃や人件費、メンテンナンスフィーなどが売上の約半分程度かかるとすると、粗利は1,820万円。約2年半で投資金額をすべて回収できる計算になります。
そう考えると、不動産の利益率は、他のレンタル事業に比べるとすごく低く見えるかもしれません。しかし、他のレンタル事業は、「単価」✕「回転率」ー(「固定費」+「流動費」)という、少なくとも4つのパラメーターがあり、それぞれのパラメーターが景気などに応じて複雑に変動するため、どのパラメーターがどのぐらいになるのかを知らないと、利益を出すことは難しいです。
それに対して、不動産投資の場合、パラメーターの変動が少なく、したがって、取るリスクも小さいので、他のレンタル事業よりも利回りが低くなっているのです。
レバレッジ
初期費用を回収するのに15年や20年かかり、そこからやっと利益が生まれてくるというのは、ずいぶん息の長い話です。 その間には、建物が壊れたり、入居者さんが入退去を繰り返したり、台風や地震など様々なリスクにさらされます。 それらのリスクを考えるとあまり魅力的なビジネスに見えません。
そこで、多くの場合、「レバレッジ」を活用します。
先程の例で、初期費用5千万円のうち、自分は1割の500万円を負担し、残りの4,500万円を金融機関から借りたとします。仮に金利1.5%で30年借りると、1年あたりの返済金額は約283万円です。粗利が324万円なので、41万円が手残りとなります(実際には所得税も引かれます)。そうすると、初期投資の回収は12年程度に短縮されます。このように、借り入れを利用することで、自分の手持ち資金の何倍もの資産を取得し、利益率を上げることを「レバレッジ」といいます。不動産投資では、このレバレッジを活用して、初期投資の回収を大幅に短くすることが目的の一つとなります。この場合、不動産を担保に、借り入れをするリスクを取ることが、利益の源泉となっています。
キャピタルゲイン
不動産の投資法としてキャピタルゲインを取りに行くという方法があります。これはここ数年特に都心部でマンション投資と言う形で多くの人が実践しています。
5千万円を10年間定期預金に入れたところで、5,050万円程度にしかなりません(金利0.01%の場合)。それに対して、2013年ごろに5,000万円で購入できた2LDKの都内のマンションは、現在、8,000万円を超える価格で販売されています。これは、物件の価格が上がったのではなく、金銭の価値が下がったから、つまりインフレがあったためです。
もちろん、インフレではすべてのものの値段が上がるので、それ以外の商品の価格も上がっているため「儲け」とは言い難いものがあります。つまり、5,000万円で買ったマンションを9,000万円で売ったとしても、売却益に対する税金を払った後の手残りの8,000万円で新たに2LDKの物件を買おうとしても、そのためには9,000万円が必要になるからです。売ったマンションよりも築年数が10年新しいものを買おうとした場合、さらに多くの金額が必要になります。
しかし、少なくとも定期預金に入れていたお金は50万円しか増えていないので、それに対しては利益が出ているという見方をすることができます。
一方で、もしインフレがなかったらどうなっていたでしょうか?もしインフレがなかったら、その物件そのものの価格で判断されることになりますが、マンションの場合、購入価格の土地
/建物比率は建物に大きく偏っています。したがって、減価償却で大きく価値が下がることになり、5,000万円の物件価値は3,500万円程度になっているでしょう。同じ期間にデフレが起こっていた場合、さらに金額が下がることになります。このように、マクロ経済動向や物件の劣化といったリスクを背負うことになります。
このキャピタルゲインは、「自分の手持ちの資金を何に投資するか?」という判断で、インフレに賭けてマンションを買うというリスクを取ったことに対するリターンと言えます。
開発リスク
また、最近行われている投資として「土地から新築」という方法があります。これは、土地を仕入れて、そこに新しい建物を建て、新築で出来上がった時点で売却する、というものです。
例えば、土地を5,000万円で買い、5,000万円を銀行から借り入れして1億円で物件を建てます。その物件を満室にして、賃料が800万円程度になったとして、それを利回り5%程度で売却すると、1億6千万円になります。そこから銀行からの借り入れ分を返済し、自分の最初の持ち出しと、税金、売却に関する諸経費を引いたとしても、3,500万円程度は手残りがあります。物件を建てるのに約2年程度かかりますが、5,000万円を2年間で8,500万円にできるので、急成長できる方法として実践している人がいます。
「キャピタルゲイン」の場合、売主はマンションのデベロッパーとなりますが、そのマンションのデベロッパーが取っている利益を取りに行くという方法です。
しかし、これを実施するためには、建築するためのリスクや、業者の選定など、建築から法律、税金まで幅広いリスクがあり、かなり難易度の高い方法です。
そして、最大のリスクが「建築会社が建築途中で倒産すること」です。これが発生すると、それまでに払った手付金などは一切返ってこないばかりか、中途半端に工事が進んでいるモノが残っており、これを仕上げてもらう新しい建築会社を探して、そこに続きの施工をしてもらうということになります。しかし、誰かが途中までやったものを引き受けて施工をしてもらうことは難しく、費用も大きく膨れがちです。場合によっては1億円でできたはずのものが2億円になり、1.6億で売れても全く利益が出ないどころか大きな赤字となる可能性があります。
この場合、「建築期間中の2年間の資金リスク」をひたすら背負うことになります。ハイリターンの裏には、ハイリスクがあるのです。
このように様々な利益の源泉があることをご紹介しました。
これ以外にも「民泊で利回りを更に上げる」「駐車場やコインランドリーで儲ける」といった事業収益を取りに行く方法もあります。
いずれにしても、「なぜ儲かるのか」を常に意識して、どの程度儲かればいいのか、何に投資して、何に投資しないかを意思決定していくことが大切です。
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