2024年3月1日
利回り
利回り(りまわり)とは、不動産投資において、物件から得られる収益(インカムゲイン)を投資した資本に対して割合で表したもの。 表面、利回り、実質利回りなど様々な種類の利回りがある。 不動産の価格を見極める上で最も重要な指標。 黙秘表となる利回りを「目線」と言うこともある。利回りを制するものが、不動産投資を制すると言っても過言ではない。
不動産投資を始めるとき、多くの方がまず注目するのが「利回り」です。利回りは、投資金額に対する収益の割合を示す指標であり、大きく分けて「表面利回り(グロス利回り)」と「実質利回り(ネット利回り)」の2種類があります。この2つの違いを理解しておかないと、思ったほど利益が出なかったり、逆にリスクを過小評価してしまったりする可能性があります。そこで本記事では、利回りの基本的な計算方法から両者の違いまで、具体的な数字を使って詳しく解説していきます。
まず、表面利回り(グロス利回り)とは、物件購入価格に対して年間で得られる総賃料収入がどのくらいの割合になるかを示したものです。たとえば、1,000万円で購入したワンルームマンションを想定します。毎月の家賃収入が8万円だとすると、年間家賃収入は8万円×12か月=96万円です。この場合、表面利回りは、
(年間家賃収入 ÷ 物件購入価格) × 100=(96万円 ÷ 1,000万円) × 100=9.6%
となります。表面利回りは、物件検索サイトや不動産仲介会社の広告などでよく目にする指標ですが、その名の通り「表面上」の収益率を表している点に注意が必要です。なぜなら、実際に不動産を所有して収入を得るためには、管理費や固定資産税、修繕積立金、保険料などのランニングコストがかかるからです。これらの費用は表面利回りの計算には含まれておらず、「想定される最大限の収益率」を単純に示しているにすぎません。
一方、実質利回り(ネット利回り)は、上記のような諸経費を差し引いた後の“実際に手元に残る”収益が、投資金額に対してどの程度の割合になるかを示すものです。先ほどの例で、年間家賃収入96万円から、以下のような経費が差し引かれるケースを考えてみましょう。
・管理費や修繕積立金:毎月1万円(年間12万円)
・固定資産税や都市計画税:年間5万円
・火災保険や地震保険:年間1万円
合計すると年間で18万円の経費が発生します。そうなると、家賃収入96万円-経費18万円=78万円が実際の手残りとなります。この78万円をもとに実質利回りを計算すると、
(手残り収入 ÷ 物件購入価格) × 100=(78万円 ÷ 1,000万円) × 100=7.8%
という結果になります。同じ物件でも、表面利回り9.6%から実質利回り7.8%へと差が生じるわけです。この差は、物件や管理会社、地域、金融機関のローン条件などによって大きく変わるため、投資判断をするときは表面利回りだけでなく、実質利回りもしっかり確認することが大切です。
また、実際の投資においては、ローンを組んで物件を購入するケースが多く見られます。その場合、ローン返済額もキャッシュフローに大きく影響します。ローンの金利や返済年数によっては、毎月の収支がギリギリになったり、マイナスになったりすることもあり得ます。表面利回りだけ見て「9%もあるなら十分だ」と思っても、経費やローン返済後の手残りを計算したらほとんど利益が出なかった、という話は珍しくありません。とくに区分マンション投資などで修繕積立金が高額になる物件もあるため、数字をしっかりとシミュレーションすることが重要です。
さらに、利回りには「空室リスク」も考慮する必要があります。計算上は満室での家賃収入をベースにしていても、空室期間が長引けば家賃収入は減り、当然ながら利回りも下がります。たとえば先ほどの例で、年間の家賃収入を96万円で想定していたとしても、入居者が退去して2か月分の家賃が入らなければ、実際には96万円-(8万円×2か月)=80万円になります。経費18万円を差し引いた残りは62万円となり、実質利回りは(62万円 ÷ 1,000万円) × 100=6.2%に下がってしまいます。実質利回りだけを計算していても、空室リスクを反映できていないと、その数字はさらに机上の空論に近づいてしまうのです。
このように、不動産投資においては「表面利回りはあくまで参考値であり、実質利回りを意識する必要がある」という点が非常に重要です。実質利回りを算出するには、家賃収入の実績や空室率、管理費、修繕積立金、固定資産税、保険料など、細かい費用の把握と反映が欠かせません。また、ローン返済額まで考慮したキャッシュフロー表を作ることで、手元にどのくらいのお金が残るかをより正確に見積もることができるようになります。
初心者の方は、まずは物件の所在地や築年数、周辺の家賃相場をリサーチし、表面利回りと実質利回りの両方を試算してみるとよいでしょう。表面利回りを高く見せるために実際の経費を少なく書いているケースもあるため、公的な情報や複数の不動産会社から情報を集め、必要に応じて自分でも費用を見直してみることが大切です。不動産投資は長期的な運用となることが多く、家賃相場の下落や修繕費の増加など、将来的なリスクも考慮に入れて計画を立てる必要があります。実質利回りのシミュレーションを行い、将来にわたって安定した収益が見込めるかどうかをしっかり見極めたうえで、投資判断を行うようにしましょう。
不動産投資における6種類の利回り解説!注意すべき3つのポイントも解説
動画で詳しく解説→【不動産投資】誰でもできる事業計画書・収支シミュレーションの作り方【AI研究所Vol.3】
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