2024年3月1日
担保
担保(たんぽ)とは、ローンなどの債務の返済を保証するために提供される資産。不動産取引においては物件が担保として用いられる。 これから買う目的の物件を担保に入れて、ローンを利用することができるのが、不動産投資にとっての最も大きなメリット。 このことをレバレッジという。 逆に、不動産の担保価値が足りない場合、追加担保を求められることもある。
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不動産投資を進めるうえで、「担保」という言葉はしばしば登場します。担保とは、簡単に言えば「借金などの債務を確実に弁済するために提供する保証資産」のことです。たとえば金融機関から融資を受ける際、借主の信用だけでなく不動産や動産などの資産を「これを返済が滞ったときの補填にあててください」と差し出すことで、金融機関のリスクを減らす仕組みです。不動産投資においては、高額な資金を調達しやすくするために担保を差し入れるケースが多くあります。本記事では、担保とは何か、担保を「入れる」ということは具体的にどういうことか、担保が流れたらどうなるのか、万が一返済できなくなった場合の流れはどうなるのか、担保の価値はどのように決まるのか、不動産以外にはどのようなものが担保になり得るのか、そして不動産担保を使うメリットやよくある質問などについて詳しく解説します。
担保の意味
担保という言葉の一般的な意味を改めて確認しておきましょう。担保とは金融取引において「貸し倒れ(返済が行われない)リスクを抑えるために融資先(借主)が差し出す資産」のことを指します。この資産を担保に設定することで、貸主は借主が返済できなくなった場合、担保に設定した資産を処分(売却など)して貸したお金の回収を図ることができます。担保の設定には、不動産や有価証券、場合によっては動産(車、貴金属、在庫)など多種多様な対象が用いられます。とはいえ、不動産は資産価値が大きく安定している場合が多いため、特に大きな金額を必要とする不動産投資や事業資金の借り入れにおいては、不動産が担保として最もよく利用されるのです。
担保の手続き
「担保に入れる」という行為は具体的にどういった手続きや状態を指すのでしょうか。たとえば、不動産を担保に入れる場合、登記情報に抵当権を設定することが一般的です。抵当権とは、「借主が返済できないとき、その不動産を競売にかけて回収する権利」のことです。不動産の所有権そのものは借主にあるものの、抵当権が設定されると、その不動産は「自由に処分してはならない(あるいは処分する場合に貸主の同意が必要)」という制限がかかります。つまり「担保に入れる」というのは、所有者が依然として不動産を持っている一方で、金融機関が「万一の場合には物件を売却して弁済にあてますよ」という強い権利を持つ状態を作ることなのです。
担保が流れるとどうなるのか?
借主が返済できず、担保が流れる(担保権が行使される)とどうなるのでしょうか。担保が流れる状況は、主に借主が長期延滞して回収が見込めなくなった場合に金融機関が「競売手続き」を行うケースが多いです。競売とは裁判所の手続きのもとで不動産を強制的に売却することであり、その売却益を貸金の返済に充当します。このとき、売却金額が元本や遅延損害金、費用などをすべてカバーできればよいのですが、競売価格は市中相場よりも低くなることが一般的です。十分な金額が得られない場合、たとえ担保を処分したとしても残債務が残るケースがあり、借主はその残債を引き続き返済する義務を負うことになります。担保が流れても、それだけですべてが清算されるわけではないという点は非常に重要です。
不動産を担保に入れて融資を受ける場合、金融機関は担保価値をどう評価するのでしょうか。銀行などの金融機関は、まず当該不動産の市場性や立地条件、将来の価格変動リスクなどを総合的に判断し、不動産鑑定士や独自の査定方法を使って担保評価額を算出します。一般的には、その不動産が自由に売買されるときの価格、すなわち時価がベースになりますが、実際には「競売になった場合にいくらで売却できるか」という観点が重視されるため、市場相場よりも低めに査定されることが多いです。また、「物件種別(戸建て・マンション・ビル・土地など)」「築年数」「構造」「周辺の環境」「再建築の可否」「法的規制の有無」といったあらゆるファクターが加味されます。そのうえで融資額の上限を決定するため、借主がいくら「時価はいくらだから、それをベースにたくさん融資をしてほしい」と望んでも、金融機関独自のリスク管理基準を超える融資は難しいというのが現実です。
こんなにある。不動産以外に担保にできるもの
不動産以外にも担保になり得るものは何があるでしょうか。代表的なものとしては、有価証券(株式、債券、投資信託)や動産(自動車、貴金属、美術品、在庫など)が考えられます。ただし、これらを担保として評価するためには、市場性(売却しやすいかどうか)や価格変動のリスクを慎重に見極める必要があります。有価証券は流動性が高く換金が容易ですが、価格変動リスクが大きいケースがあります。一方、自動車などの動産は償却が進み、価格が下落しやすい特徴があるため、高額な融資を受けるためには不向きです。貴金属や宝石、美術品などは比較的高額になりやすいものの、真贋の鑑定や市場価値が時期やトレンドに左右される面があるため、金融機関が担保として扱うにはハードルが高い場合が多いです。こうした点からも、不動産は融資側にとって安定性のある資産として最も優先的に担保扱いされる傾向があります。
不動産担保のメリット
ここまで、不動産を担保に入れるときの仕組みやリスク、評価のされ方などを見てきましたが、それでは不動産担保を活用した投資にはどのようなメリットがあるのでしょうか。第一に、「高額な融資を受けやすくなる」という点が挙げられます。担保を差し入れずに多額の融資を受けようとすると、当然ながら金利が高くなったり、融資そのものが難しくなる可能性があります。担保を提供することで金融機関のリスクが下がり、より低金利かつ高い借入限度額を設定してもらえることがあるのです。第二に、「資金が効率的に回せる」ことも見逃せません。自己資金だけでは大きな物件に手が届かなかったとしても、担保を活用してレバレッジを利かせれば、より大きな不動産投資を実行できる可能性が高まります。不動産投資では、キャッシュフローをうまくマネジメントしながら長期的に収益を伸ばしていくために、融資を活用することが一般的です。その際に不動産担保は大きな味方となります。
ただし、担保を設定することはリスクも伴います。すでに述べたように、万が一返済できなくなった場合、不動産は競売にかけられてしまいます。個人の住宅を担保に入れている場合は、最悪マイホームを失うことにもなりかねません。投資用不動産であっても、せっかく購入した物件が取り上げられてしまえば、将来的な家賃収入も失いますし、さらに競売で回収できなかった残債を返済し続けなければならないというケースもあり得ます。つまり、借りられる額以上に借りる、返済計画を十分に立てないなど、安易な資金調達は大きな損失を招くおそれがあるのです。
融資を受ける際には、キャッシュフローシミュレーションをしっかりと行い、収支や返済の見通しを綿密に立てることが重要です。借入金利が何%であればキャッシュフローが回るのか、空室率や修繕費などの予想外の出費に対応できる余裕はあるのか、金利上昇リスクを見越したプランは練られているのか、こうした点をクリアにしておけば、不動産担保を利用した投資もより堅実なものとなるでしょう。また、金融機関との交渉力も大切です。複数の金融機関の融資商品を比較検討し、担保評価額や金利、返済期間、保証料などの条件を慎重に見極めたうえで契約を結ぶことで、リスクとコストを抑えた不動産投資を進められます。
よくある質問
- 担保に設定した不動産は自分で自由に売却や賃貸契約ができますか?
担保設定されている不動産の所有権は依然として借主にあるため、法的には処分が可能です。ただし、多くの場合金融機関の同意が必要となります。無断で売却してしまうと債務不履行とみなされ、返済を一括請求されるリスクもあります。賃貸契約は比較的自由に行えますが、金融機関との契約内容によっては報告義務などの条件が課されることがあります。 - 担保が競売にかけられたら必ず借金はゼロになりますか?
競売による売却金額が債務の残額を上回れば借金を完済できますが、多くの場合競売価格は市中相場より安くなる傾向があります。結果として、競売で得た金額だけでは完済できず、残債が残る可能性があります。この残額は借主が引き続き返済する義務があります。 - 担保にはどのくらいの価値が求められますか?
金融機関の評価基準によりますが、融資希望額の100%以上の担保価値が必要とされることもあれば、80%程度の担保評価額までしか融資しない場合もあります。たとえば担保価値が1億円と評価された不動産があっても、金融機関によっては6,000万円~8,000万円しか貸し出さないといったケースは珍しくありません。最終的には銀行のリスク管理ポリシーや不動産の性質によって異なります。みずほ銀行の例 - すでに住宅ローンがある不動産を担保に追加で融資を受けることはできますか?
原則として可能ですが、先順位抵当権の設定状況や残債の状況などが影響します。すでに銀行Aが抵当権を持っている場合、銀行Bが新たに担保設定をするには、銀行Aよりも後順位の抵当権となります。後順位は競売時に回収が劣後し、リスクが高いことから融資を断られることもありますし、仮に融資を受けられたとしても金利や条件が厳しくなる傾向があります。 - 不動産担保ローンと住宅ローンはどう違いますか?
住宅ローンは「自らが居住する住宅の購入」を前提とした長期融資商品であり、金利優遇制度や返済期間が長めに設定されていることが多いです。一方、不動産担保ローンは事業資金や投資用不動産の購入、あるいは急な資金ニーズに応えるためなど幅広い用途で利用できますが、住宅ローンよりも金利が高めに設定される場合が一般的です。また、不動産担保ローンは返済期間が短めの場合もあります。
不動産を担保に入れて融資を受ける仕組みは、不動産投資にとって非常に重要な資金調達の手段です。しっかりと返済計画を立て、リスクとリターンを見極めることができれば、レバレッジ効果を最大限に活用し、大きな投資利益を狙うことも可能となります。しかしながら、当然リスクも伴うため、競売リスクや金利上昇リスク、物件運用のキャッシュフロー悪化などに十分注意しなければなりません。
投資額が増えれば増えるほど、資金計画の精度が問われるのは言うまでもありません。金融機関との交渉や専門家への相談を通じて、融資条件の中身をじっくり検討し、長期的に安定した運用を見込める物件選びと資金調達スキームを確立しましょう。計画性を持った不動産担保の活用は、投資ポートフォリオを拡大し、安定した収益基盤を築く大きな手助けとなり得るのです。
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