2024年3月1日
転貸
転貸(てんたい)とは、不動産ローンなどの貸付契約を第三者に譲渡することです。一般的には貸主の承諾が必須です。またサブリースともいいます。サブリースを契約すると、入退去の管理や賃料の回収などを行う必要がなくなります。そのため、管理の手間をかけたくないオーナーはサブリースを選びます。
国土交通省 サブリース住宅標準契約書

転貸・サブリースとは
転貸(またはサブリース)とは、賃借人が借りている物件を、所有者(賃貸人)の承諾を得て、第三者に転貸することを指します。例えば上図の場合、以下のような賃貸借関係が成立します。
- 所有者(元の賃貸人)と賃借人(転貸人)との間の原賃貸借契約
- 賃借人(転貸人)と転借人との間の転貸借契約
例えば、不動産会社がビルのフロアを一括で借り上げ、それを小分けにして複数のテナントに転貸するケースがあります。またマンションの一室を借りている人が、所有者の承諾を得て他人に転貸するケースなどがあります。
転貸のメリット
所有者(賃貸人)にとってのメリット
- 安定した家賃収入の確保
- サブリース会社が家賃保証を行います。そのため、空室リスクを軽減できます。
- 例えば入居者の募集や管理といった手間が省けます。
- 建物管理の効率化
- プロの管理会社に一任できます。そのため、維持管理の負担が減ります。
- 例えばクレーム対応や入居者とのトラブルといった処理を任せられます。
- 事務手続きの簡素化
- 契約相手が1社のみになります。そのため、事務作業が大幅に削減されます。
転借人にとってのメリット
- 物件を借りやすい
- 転貸業者による審査基準が柔軟な場合があります。
- 保証人が不要なケースもあります。
- 専門的なサポート
- 例えば管理会社による24時間対応などのサービスを受けられます。
- 設備トラブルへの迅速な対応が期待できます。
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転貸のデメリット
所有者(賃貸人)にとってのデメリット
- 収益性の低下
- サブリース会社に支払う管理手数料分だけ収益が減少します。
- 市場家賃が上昇しても、契約で定めた家賃以上の収入は見込めません。
- 物件に対する管理力の低下
- 入居者の選定や物件の使用状況の把握が難しくなります。
- 転借人との直接的なコミュニケーションが取れません。
- 契約解除の困難さ
- 長期契約の場合、途中解約が困難になることがあります。
- 解約に伴う違約金が高額になる可能性があります。
転借人にとってのデメリット
- 家賃が割高になる可能性
- 中間業者が入ると直接契約より家賃が高くなることがあります。
- 契約の複雑さ
- 原賃貸借契約が終了すると、転貸借契約も終了する可能性があります。
- 契約関係が複雑になります。そのため、権利関係が分かりにくくなります。
転貸に関するよくあるトラブル
1. 無断転貸によるトラブル
- 所有者の承諾を得ずに転貸し、契約解除や損害賠償請求につながるケース
- 対策:必ず所有者の書面による承諾を得ることが重要です。
2. 家賃未納トラブル
- 転借人が家賃を滞納した場合の対応が複雑化
- 転貸人(サブリース会社)の経営破綻により、家賃支払いが滞るケース
- 対策:信頼できる業者の選定と、支払い保証の確認が必要です。
3. 原賃貸借契約終了に伴うトラブル
- 所有者と転貸人との契約が終了した際の転借人の扱いを巡る紛争
- 対策:契約終了時の対応について、事前に明確な取り決めを行うことが重要です。
4. 修繕・維持管理に関するトラブル
- 修繕責任の所在が不明確になることによる対応の遅れ
- 所有者、転貸人、転借人の間での費用負担を巡る争い
- 対策:契約書に修繕責任と費用負担について明確に記載することが必要です。
転貸・サブリースに関するよくある質問と回答
契約に関する質問
Q1: 転貸するには、必ず大家さんの承諾が必要ですか?
A: はい、必ず必要です。例えば大家さん(所有者)の承諾なく転貸をした場合、無断転貸となり、賃貸借契約の解除事由となります。また、損害賠償を請求される可能性もあります。そのため、トラブル防止の意味でも、承諾は必ず書面で得るようにしましょう。
Q2: 転貸の承諾を得る際、何を確認すればよいですか?
A: 以下の点について、明確に確認し、書面化することをお勧めします。
- 転貸期間
- 転借人の使用目的
- 賃料・共益費などの金額
- 原賃貸借契約が終了した場合の転借人の扱い
- 修繕費用の負担区分
- 転貸人の管理責任の範囲
Q3: 転貸借契約の期間に制限はありますか?
A: 原則として、原賃貸借契約の期間を超えて転貸借契約を結ぶことはできません。ただし、所有者の承諾があれば、原賃貸借契約の更新に合わせて転貸借契約も更新することは可能です。
費用に関する質問
Q4: 転貸の場合の敷金はどうなりますか?
A: 通常、以下の2つの敷金が発生します。
- 原賃貸借契約における敷金(所有者と転貸人の間)
- 転貸借契約における敷金(転貸人と転借人の間)
それぞれ別個の契約関係に基づく敷金となります。そのため、返還も別々に行われます。
Q5: 修繕費用は誰が負担するのですか?
A: 基本的な負担区分は以下の通りです。
- 建物の構造に関わる部分:所有者負担
- 通常の使用による破損:転貸人負担
- 転借人の故意・過失による破損:転借人負担
ただし、契約書で別段の定めがある場合は、その定めに従います。
権利・義務に関する質問
Q6: 原賃貸借契約が終了した場合、転借人はどうなりますか?
A: 原則として、原賃貸借契約が終了すると転貸借契約も終了します。ただし、以下のような対応が可能な場合があります。
- 所有者と転借人との間で新たな賃貸借契約を締結
- 所有者の承諾を得て転貸借契約を継続
- 転借人に対して適切な明渡し期間を設定
Q7: 転借人が賃料を滞納した場合、所有者は転借人に直接請求できますか?
A: 原則として、所有者は転借人に対して直接賃料を請求することはできません。ただし、民法上の賃料直接請求権を行使することで、転借人に対して賃料相当額の支払いを求めることは可能です。
Q8: 転貸人が倒産した場合はどうなりますか?
A: 転貸人が倒産した場合の対応は以下の通りです。
- 原賃貸借契約が解除される可能性があります。
- 転借人は所有者と直接の賃貸借契約への切り替えを協議できます。
- 転借人が支払った敷金が返還されない可能性があります。
このため、事前に転貸人の信用力を確認し、契約書に倒産時の対応を明記しておくことが重要です。
管理に関する質問
Q9: 物件の管理は誰が行うのですか?
A: 基本的には以下のような役割分担となります。
- 転貸人:日常的な管理業務、転借人対応
- 所有者:建物の基本構造に関する管理
- 転借人:使用部分の善管注意義務
なお、具体的な管理区分は契約書で定めることが重要です。
Q10: 原状回復の責任は誰にありますか?
A: 原状回復に関する責任は以下のように分かれます。
- 転借人:転借人の使用による損耗についての原状回復
- 転貸人:原賃貸借契約に基づく原状回復
- 所有者:経年劣化による修繕
なお、原状回復の範囲と費用負担については、事前に契約書で明確にしておくことが重要です。
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