不動産投資のキホン

2024年9月29日

【大家さん向け】賃料の引き上げに成功する秘訣!

時代の変遷に伴い、賃貸住宅の人気エリアは変わります。駅周辺に新たな商業施設がオープンし、利便性が向上すると、住みたいと考える人々が増加し、家賃相場も上昇します。

その時の相場に応じて賃料の引き上げを検討している大家もいるかもしれません。しかし、賃料を上げたいと考えても、入居者からの拒否に直面することもあります。

そこでこの記事では、家主が賃料の引き上げを成功させるために、知っておくべきポイントをお伝えします。

【この記事で分かること】
・家賃を値上げしやすい3つの時期とは、いつなのでしょうか。
・借地借家法や賃貸借契約書に基づき、家賃の値上げが認められやすい理由が分かります。
・家賃の妥当な値上げ幅や、入居者が値上げを拒否した場合の対策を紹介しています。

賃料の値上げを行うべきタイミング

賃料は多くの要因に基づいて適切に設定されています。

賃料の引き上げを行う際に、どのタイミングが“正当な理由”として認められるのか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。賃料の引き上げに適したタイミングは3つ存在します。

それぞれについて詳しく考察していきましょう。

物価や周辺物件の家賃相場が上昇した時

物価が上昇するにつれて、賃貸物件の価格も上昇することが一般的です。家賃を据え置くと、「価値の低い物件」や「人気のない物件」と見なされるリスクがあります。

他の物件が物価の上昇に応じて家賃を引き上げている中で、家賃をそのままにしていると、適切な利益が得られません。

また、周辺に新たな駅やショッピングモールが開業すると、環境が改善され、駅の利便性も向上します。このような土地の評価が上昇するタイミングで、家賃の引き上げを提案することもあります。

リフォーム・新設備の導入を行った時

入居者の生活の質を向上させるための設備を導入することが、家賃の引き上げにつながることは少なくありません。

例えば、無料のインターネットサービスや宅配ボックス、防犯カメラ、エアコンの設置を行う際に家賃の見直しを提案すると、受け入れられる可能性が高まります。

これらの設備は入居者にとって快適な生活環境を提供し、実際にその利点を実感しやすくなります。また、快適な住環境を求める入居者の退去を防ぐ効果も期待できます。

長期間にわたり賃料を据え置いている時

長期間にわたり賃料が変動していない場合、周辺の物件に合わせて家賃を再評価することがあります。例えば、新たに建設されたアパートやマンションの増加により、当時の相場よりも上昇している可能性があります。

同様の物件(規模、住居数、築年数)を比較した際に顕著な差異が見られる場合、見直しが求められることがあります。長期間賃料を据え置いていることが必ずしも適正価格を意味するわけではなく、周辺物件との価格差を解消するために家賃の引き上げを検討する必要があるかもしれません。

借地借家法に基づく賃料値上げが認められやすい理由

家賃を引き上げるには、正当な理由が必要です。たとえ賃貸人の経営状況が悪化しても、利益を優先して家賃を引き上げることはできません。また、無断で家賃を上げることは法律で禁じられています。家賃の引き上げは「借地借家法」に基づいており、正当な理由がない限り認められません。

さらに、賃貸借契約に「家賃の引き上げを行わない」という特約が含まれている場合、その契約に違反するため、家賃を上げることはできません。たとえ正当な理由があったとしても、契約内容によっては家賃の引き上げができないことがあるため、十分な注意が必要です。

借地借家法による賃料改定の正当事由とは

借地借家法による家賃の値上げが認められる正当な理由を見ていきましょう。

①不動産の税金や維持費が値上がりしている

経済状況の変化に伴い、物価が上昇し、維持費が増加する可能性があります。また、再開発によってエリアの利便性が向上すると物件の価値も高まり、その結果、固定資産税や都市計画税の負担も増加します。

これにより、大家のコスト負担が増大し、利益が減少することもあります。このような税金の増加は、家賃を引き上げる正当な理由として認められることがあります。

②賃貸物件の家賃が近隣の物件相場よりも安い

賃貸物件の家賃が周辺の市場相場よりも低い場合、正当な理由の一つとして考えられます。この状況は「適正価格ではない」と見なされ、「借地借家法第32条」にも明記されています。

例えば、同様の条件を持つ物件の家賃相場が8万円であるのに対し、自物件の家賃が7万円である場合、差額の1万円分の家賃引き上げが認められます。これは大家の意向によるものではなく、法律に基づく正当な理由として認められるものです。

家賃の値上げ幅はどれくらいが適切?

家賃の引き上げに関しては、法律による明確な上限は設けられていません。家賃の引き上げは大家の権利として認められていますが、過度な引き上げは新たな入居者を見つけることが難しくなるなど、安定経営に悪影響を及ぼす可能性があります。

入居者の生活が困難になることを考慮し、上限がない場合でも、正当な理由に基づいた範囲内での家賃引き上げを推奨します。

では、家賃の値上げをする際には、一体どれほどの値上げ幅が許容範囲なのでしょうか。

周辺にある競合物件の家賃に合わせる

まずは、所有する賃貸物件の近隣にある競合の家賃を調べ、相場を合わせるようにします。家賃の値上げ後に退去する人の多くは、周辺により安価な物件を見つけた場合です。

しかし、周辺相場と比較して家賃が高くなければ、退去のリスクは低くなります。入居者にとって新たに引っ越すにはまとまった費用がかかり、経済的負担も増すため、近隣物件と大きな差がなければ現状のまま住み続ける可能性が高まります。

周辺の家賃相場を調査する方法

周辺の家賃相場を調べる際は、賃貸ポータルサイトの利用や近隣の不動産会社への相談が有効です。間取りや築年数、設備なども含め確認しましょう。

また、TSONの不動産AIマーケティングシステム「勝率一番」では、家賃相場を簡単に調べられます。独自の不動産ベース(約7,000万件)をもとに、賃貸データを分析できますので、ぜひご活用ください。

家賃相場の調査では、所有している物件とできるだけ条件が近い物件と比較することが重要です。相場を調査したら、それを参考にして値上げ幅を決めましょう。

入居者が賃料引き上げを拒否した場合の対策3選

入居者に家賃の引き上げを提案した際、拒否されることもあります。そのため、値上げ交渉がうまく進まない場合の対策についてご紹介いたします。

①空き部屋から値上げをしていく

家賃交渉がうまく進まない場合、空き部屋の家賃を引き上げることが一つの選択肢となります。入居者を募集し、応募が多い場合には、周辺の物件と比較して家賃が適正であると判断できるでしょう。

一方、応募が少ない場合は、家賃が高すぎる可能性が考えられます。空き部屋を利用することで、家賃の妥当性を確認できるため、まずは空き部屋の家賃を引き上げることから始めると良いでしょう。

②引越しまでの時間稼ぎをする

入居者から賃料引き上げの拒否を受けた際には、すぐに対応せず「一旦社内で検討します」などと返答し、時間を稼ぐことも有効です。返事を遅らせることで、入居者が引っ越しを決断しにくい状況を作り出せます。

更新料が発生する物件の場合は、値上げ通知を更新直前まで送らず、タイミングを工夫しましょう。これにより、入居者が急に引っ越すことを避ける可能性が高まります。

③値上げを見送らなくてはいけないこともある

家賃収入が安定しており、賃貸経営が黒字である場合、一時的に値上げを見送るのも一つの方法です。無理に家賃を引き上げることで、賃貸人が退去し、結果的に収入が減少するリスクも考えられます。

早期に見直したい気持ちは理解できますが、リスクを軽減するために、値上げは次の機会に行うことが時には重要な判断となります。

もし話し合いが難しい場合は、裁判所の「調停」を利用する方法もあります。裁判官などの第三者に家賃の値上げが妥当であると認めてもらえれば、納得を得られる可能性も高まります。

まとめ

賃料引き上げを迷っている大家さんも、まずは周辺の物件相場を確認し、どのくらいの差があるか調べましょう。家賃が低すぎると損をしてしまうこともあるため、物価や相場に合わせて適切に値上げしていくことが大切です。

値上げ交渉がうまくいかない場合は、入居者に値上げの妥当性を伝え、納得してもらえるよう工夫しましょう。家賃の引き上げをする際は、入居者に値上げが正当であると理解してもらうことが重要です。

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