土地を手放すことなく、固定資産税等の支払いができるだけの地代収入が長年にわたり確保できるので、税の負担に耐えられる。
住宅地で活用すると、小規模宅地の適用により固定資産税や都市計画税が格段に軽減され、固定資産税は更地の1/6、都市計画税は1/3になる。例えば未利用地で年間100万円あった税額も、1/5以下になる計算である。
借入が不要の事業で、宅地造成費用などの事業資金を必要とする場合には、契約時の一時金を充当できる。定期借地事業は、基本的には無借金事業である。
契約時に保証金、権利金、前受地代などの一時金を得ることができるので、土地を売却することなく資金調達ができることになる。
安心・安全な長期安定経営が実現できる。貸家経営のような空室の問題や中途解約(入退去)が少なく、長期にわたり継続する安定経営が実現する。
相続税対策としては、土地の評価額が圧縮されることで、節税面の効果が大きく、また、遺産を分割する、相続税を納税するための対策にも効果を発揮する。
平成10年8月の国税庁の個別通達「一般定期借地権の目的となっている宅地の評価に関する取扱いの見直し」により、底地の評価額が大幅に引き下げられ、節税額が大幅にアップした。(従来は20%の評価減)
収支面では、経費として支出するものは固定資産税等と借地契約の管理費等となり、借入れ返済がないことから、事業収支は必ずプラスになる。
契約時の一時金を貸家建設資金の一部に充当すれば少ない借入ですむので、トータル的には事業収支は改善され、この相乗効果による収益力は大幅にアップする。
定期借地による住宅地開発は、道路をきちんと整備しゆったりした宅地割をするなどのインフラ整備が期待される。自然の地形や植生を活かした環境づくり、コモンスペースや広場や植栽、プレイロット、ストリートファニチャー、歩行専用の緑道で結ぶなどの工夫をこらすことで、住民が触れ合うコミュニティーが形成される。
定期借地による住宅地開発では、地主と借地人の良好な関係作りが期待されている。
一般定期借地権なら50年以上もの期間、土地利用が拘束され、更地に比べると土地の処分もしにくいという問題がある。
住宅用地を戸建やマンションで活用した場合の多額の地代収入は期待できない。事業リスクが少ない反面、収益面でのリターンも少ない事業である。
事業用定期借地権で事業者に貸す場合は、事業者がその土地からあげる収益に応じて地代水準が変動する場合もあるが、おおむね確実に住宅地以上の収入が期待できる。
一時金の種類には、保証金、権利金、敷金、前払地代などがある。権利金は受取り時の所得税課税、保証金は将来の返還の煩わしさがある。前払地代方式の前受地代は、将来返還する必要がないので実体は権利金であるが、権利金のように一括課税されることなく、毎年均等に収益計上することで課税の分散がはかれる。保証金と違い将来の返還も不要で、権利金と保証金の弱点が解決した。
敷金の額は、賃料の1~2年分と比較的少額となるが、その分、地代水準は高額になる。保証金方式が相続人への債務引継ぎの負担から敬遠される場合には、賃料未払いと原状回復費用相当を保全する目的の敷金方式も検討される。
定期借地権の権利設定の対価として授受され、個人地主の場合は、一般的には不動産所得として課税されるデメリットがある。
権利金額が土地の時価の50%超なら、譲渡所得課税(税率20%)が適用される。課税は、事業用資産の買換え特例などを利用できれば軽減できる可能性がある。定期借地権による資金調達額を最大化できる事業方式として、一括前払地代相当額を権利金とする事業化も考えられる。
戸建定期借地事業では保証金方式が主流となっている。定期借地権マンションでは権利金の採用も多い。地主は事業資金として多額の一時金を欲しがるが、その一方で借地人も、将来の賃料が高額化することへの不安があり、定額の賃料を好む傾向にあったことから、高額な保証金方式が多く採用されていた。最近は、以前に比べると保証金も値下がり傾向にあり、その反面、賃料を高くする傾向にある。
土地所有者は、前受地代を期間に応じて益金(収入)計上(年額分を収入計上)する。実体は権利金であるが、権利金に比べ課税上のメリットが大きい。借地人が事業者の場合は、期間に応じた損金(経費)計上が可能となる。